Close To You

(2)

白い・・・しろい・・どこまでも真っ白な世界。ここは・・何処。
私の魂は消えてしまったはずなのに。どうして・・・
何かの気配がする。近づいてくる。でも姿は見えない。
「・・・迎えに来た」
「?!」
突然の声に振り返る。低く掠れた声・・。
霧の中から現れた誰かが私に向かって歩いてくる。
大きな体。赤銅色の髪。琥珀の瞳。
(・・・ヴィ・・ク・・トール・・さ・・ま・・)
体が震えて動けない。声も出ない。
あの日のままの姿で、手を差し伸べ優しく笑う人。本当に貴方なの?
指先が触れる。握り締められる手。
温かい・・
忘れかけていた懐かしい温もりが胸を満たす。
「すまん・・・」
「・・・・」
「こんな形でしか、お前を迎えに来る事が出来なかった」
「・・・・」
「お前の側にいて、守ってやることが出来なかった・・・許してくれ」
その言葉に、私は首を振る。何度も、何度も。
何かか溢れて貴方が霞んでいく。熱いものが込み上げて崩れかける体を、その腕が支えてくれる。
「ヴィクトール様・・・?」
「ああ!アンジェリーク」
やっと声が出た。私の名を呼ぶ声に涙が零れる。あの哀しみの日からあんなに泣く事を忘れていたのに。
「よく顔を見せてくれ」
「うぅぅ・・・・」
「随分痩せたな・・だが、その瞳の輝きはあの頃のままだ」
このこけた頬が大きな掌に包まれた。哀しく、優しく貴方の瞳が揺れている。
「ずっと、お前を見ていた。長い間、よく頑張ったな。立派だったぞ」
暖かな言葉と共に貴方は私を強く抱き締めた。
同じ・・・
アルカディアで再会したあの日と同じように。
張り詰めていたものが、硝子が割れるように砕けて粉々になって、消えていく。
私は、声を張り上げて泣いた。
愛を求める幼子のように・・ただひたすらに。
「気が済むまで、泣けばいい・・・」
9年分の涙が堰を切った。
貴方の胸を何度も強く叩いて泣きじゃくる。
「今は、すべて忘れろ・・」
それから貴方は何も言わずに私を泣かせてくれた。
優しく髪を撫でて背中を摩って・・・私の名前を囁いて・・
どのくらいそうしていただろう。
私は泣き疲れて貴方の腕の中で眠った。
何もかも忘れて。
やがて目覚めるその時まで、ずっと・・・・


「ここは・・・何処ですか。私の魂はアルフォンシアに預けたはずなのに」
見上げると貴方は静かに微笑んだ。
「見ろよ」
その瞬間世界は変わる。地平線へ続く緑の絨毯と、優しい花々。
そして、大きな木。ここは・・まさか。


「女王よ・・・」
聞き覚えのある声が聞こえる。
「!?あなたは、エルダ?・・いいえ。アルフォンシア」
「今こそ償いを・・どうか」
「償い?」
エキゾチックな青い衣装を纏った長身の青年と、結った黒髪に鈴を鳴らす少女が目の前に浮かんでいた。
「宇宙創世紀の女王陛下、そして隣で守護する者よ・・」
「え・・」
少女の声は、あの日の救いを求める声だった。
私は言葉を求めて貴方を振り返る。
ただ微笑んだままで、背中を押す貴方。
「あのころの私は未熟でした。貴女の力と共に、我が身が衰えていきました。けれど今は、貴女が授けてくださった魂と共に、大きな力とこの姿を得ることが出来ました」
「そして、未来の宇宙を2度も救ってくださった・・ずっとお礼が言えませんでした。ありがとうございます。ささやかですが、どうか私達の力を受け取ってください」
アルフォンシアの言葉に続いて少女が心に語りかけて来る。
私と同じ空気を持ったその少女ば、聖母のような微笑を浮かべ、黄金の翼をはためかせた。
「偉大なる創世紀の女王に感謝と祈りを捧げます。魂の転生を・・」
大きな白い光に包まれて二人は彼方に消えていく。空からは白い羽根が舞い降りて、きらきらと美しい光を放った。
遠い記憶が蘇る。優しく、穏やかに流れる時間。


「ヴィクトール様・・・すべて知っていたんですか・・・」
「ああ・・」
手を取り合い私と貴方は見つめ合った。
「アンジェリーク。約束を果たそう今、ここで」
「はい・・・」
瞳を閉じて静かに交わす誓い。
お願いです。もう二度と私の前からいなくならないで下さい・・・


「ここは変わらないな。いつの時代でも」
「はい。未来の宇宙が平和でよかった。未来の女王の命が無事でよかった・・」
私は貴方の胸でもう一度泣いた。
「・・ハハ。お前らしいな。何一つ変わっていない」
そう言って私の体を抱き上げる。
「アンジェリーク。お前の笑顔を見せてくれ」
私は心からの笑顔を貴方に見せた。
忘れていたあの頃の私に戻るために・・
そして、貴方のために・・
「これからはずっとお前の側にいる。二度と泣かせない。」
「ヴィクトール様・・」
「辛い回り道はもう終わりだ。アンジェリーク・・・愛している。ここからまた始めよう」
私は強く頷いて貴方の肩に手をまわした。
この命が再び尽きてもずっと・・・私も貴方を愛してる・・。だからその頬に答えを返します。


命は巡る。哀しい運命など、きっとありはしない・・
どんなに時が流れても、強い想いは寄り添い離れることはない・・
永遠に・・・


―END―

無理やりな設定で始まったのに、無理やりな設定でハッピーにしてしまいました(^^:
アリオスのこともありますしいいですかねぇ。でもあの女王はどうなったか疑問ですね。
私はやっぱりSP2で幸せになるのが王道だと思っていますので
気分を害されたらすいません。
女王になっても恋も仕事もうまくいったらそれが一番いいんですけどね(;;)
私のとぼい文章力ではシリアスに切なくがうまく表現できませんでした。がーん、